2014年6月14日土曜日

◆4月 学習会(筧光夫氏)の報告です

田植えの終わった田んぼ(5月) 市内(木売)で

 4月12日、筧光夫氏(理学博士 明海大学歯学部口腔解剖学分野)をお招きし、「水道水フロリデーションは歯と骨をもろくする―最新の研究結果から―」というテーマで学習会を開催しました。

お話の内容をまとめてみました。
(※フロールとはフッ素(Fluorineフルオリン)由来の言葉です。Fluorido(フロライド,フルオライド)はフッ化物のことです。)


 はじめに朝日新聞の記事(2014.2.22)の紹介がありました。
「フッ素はカルシウムやリンを取り込んで、歯のエナメル質を修復したり、歯の質を強くしたりすることで、むし歯の発生と進行を防いでくれるのです。ただし、フッ素配合のハミガキを使っても、お口の中のフッ素濃度は時間とともに減少してしまいます。フッ素が口内に長く留まるよう工夫されたハミガキなどを上手に活用しましょう。また、歯みがき後のすすぎのしすぎに注意。すすぎは少量の水で1回がおすすめです。」
これは確かなのでしょうか。

歯のエナメル質、象牙質および骨には、生体鉱物として,リン酸カルシウムからなる アパタイト結晶が形成されています。

フッ素が歯科予防に効果があるとされる主な根拠として次の5点があります。

1.フッ素イオンがアパタイト結晶の水酸基と置き換わり、酸に溶けにくいフロールアパタイトに変化(フロール化)する。

2.歯のエナメル質表層が、形成されたフッ化カルシウムにより覆われ、耐酸性が向上する。

3.フッ素イオンが、エナメル質の結晶形成過程で、直接関与してフロールアパタイトを形成する。

4.むし歯などによって 損傷を受けたエナメル質の結晶の修復(再石灰化)を促進する。

5.酸産性の口腔内細菌を殺す。


1は、フッ素洗口等の効果として挙げられています。しかし観察の結果フッ素イオンが置換されることはなく、フロールアパタイトは形成されません。

2では、フッ化カルシウムを常に更新していかなければ効果がないので、その過程で、フッ素が体内に吸収されてしまいます。

3は、水道水フロリデーション等の効果として挙げられています。しかしこれは病的石灰化を伴います。生体内に取り込まれたフッ素イオンは骨や他の組織へ悪影響を及ぼします。

4の裏付けとなる再石灰化の実験は、人体にとって不可能な条件下で行われたものであり、いったんう触に侵された結晶は修復されません。


 
 アパタイト結晶の結晶核形成をつかさどっているのは炭酸脱水酵素です。
フッ素暴露により炭酸脱水酵素の合成や活性が阻害されます。

フッ素暴露やカドミウム暴露により貧血を起こすという事例が論文で報告されています。炭酸脱水酵素の亜鉛イオンがカドミウムにより置換され、活性低下を引き起こしたものと考えられます。


 生体アパタイト結晶には2種類あり、ひとつは、サメの歯にみられるようにエナメル質がフロールアパタイトから成るもの、もうひとつはナウマン象(哺乳類,ヒトも)にみられるようにハイドロキシアパタイトから成るものです。
 後者のアパタイト結晶は有機質の被膜の中で形成されるのが特徴であり、沈殿現象とはまったく異なるものです。そして結晶の核形成のカギを握っているのは炭酸脱水酵素なのです。


 ヒトのエナメル質の結晶には中心線が存在します。これが結晶の核であり、中心線形成には炭酸脱水酵素が直接関わっています。
エナメル質と骨では結晶のメカニズムが異なると考えられていますが、これは否です。
 
レーザーラマン分光装置を用いて、フッ素摂取によるエナメル質と骨の結晶にみられる結晶の構造異常と炭酸脱水酵素に与える影響について観察、分析を行いました。


 メキシコから斑状歯のサンプルをもらいました。
エナメル質の内部がチョーク状になっており、結晶破壊による光の乱反射で白く見えます。
乳児に高濃度のフッ素を塗布することにより、形成途上にある未萌出の永久歯に影響が出ると考えられます。

 炭酸脱水酵素に対して、フッ素はカドミウムの20倍の阻害効果をもっています。
「フッ素の濃度を抑えればよい。」といいますが、低い濃度(0.5ppm)でも、電子顕微鏡で見ると結晶構造欠陥が観察されます。目に見えなくても結晶形成が影響を受けているのです。

 歯のエナメル質について①正常、②むし歯、③フッ素暴露の電子顕微鏡の観察像を見ると、むし歯やフッ素暴露された歯のエナメル質は結晶構造が阻害されています。(このため光の乱反射によって表面が白くみえるのです。)

③はフッ素暴露により結晶の中央(核)が欠落しています。
「フッ素により耐酸性が高まる」といわれますが、これは結晶の中央(核)が欠落したためなのです。結晶の中央(核)は最も酸に弱い部分です。それが欠落したので、結果として「耐酸性が高まった」ような現象が起きます。歯質が強化されたわけではありません。

 フッ素は過去に骨粗鬆症の治療薬として使われていましたが、現在はWHOによって認められていません。
フッ素により、骨の骨梁は増えないのに質量が増えるのです。結晶構造をみると中心線(核)を持ったものや持たないもの、結晶の大きいものや小さいものが観察されました。
これは病的石灰化です。

以上にみられるように、フッ素は炭酸脱水酵素を阻害することにより、歯や骨に影響を与えます。



 お話の内容はかなり難しかったのですが、プロジェクターで結晶の写真等たくさん見ることができ、要所々で何度も質問の時間を設けてくださり、理解が深まりました。今後も勉強していきたいと思います。
 筧先生、たいへんご多忙の中、ありがとうございました。



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