2013年10月29日火曜日

◆WHOは言っている テクニカルレポート846 その2

コスモス 市内で

前回(10月26日)につづきWHOについてです。

吉川市健康増進課や推進派の学者は、水道水フロリデーションについて「WHOが推奨している」「権威のある機関がいっているのだから」と繰り返し言っています。

しかし、1994年に発表されたWHOテクニカルレポート846を読むと、いろいろな注意事項や制限が盛り込まれており、健康増進課や推進派の学者から受けるWHO像とは異なる印象を受けます。

私たちは、WHOがどうあれ、水道水フロリデーションに反対ですが、

WHOが本当にどんなことを言っているのか知ることも意味があると思うので、以下気になったことを報告します。 10月26日の分と合わせてお読みください。

なお、引用は日本語訳「フッ化物と口腔保健-WHOのフッ化物応用と口腔保健に関する新しい見解-」 (日本語監修:高江州 義矩 訳:眞木吉信他 一世出版)(*注) を用いています。

 ◆ 第7章 飲料水中のフッ化物
 7.4 飲料水中の適正なフッ化物レベル
 (少し長いですが 引用します。)
 50年も前からのDeanの研究によって、飲料水中の最も適正なフッ化物の濃度は1.0mg/l (ppm)とされている。 彼のいう“最適 most appropriate” とは、歯のフッ素症の発現を受容できる最低限度に抑え、かつ最大のう蝕減少が可能な濃度を意味したものである。
しかし、暑い気候の人々は、普通の気候の人々に比べて多量の水を飲むため、この1.0mg/l (ppm) という値は0.7-1.2mg/l (ppm) と幅を持たせたものに改善された。つまり、平均気温の高い地域では、飲料水中のフッ化物レベルはより低いレベルが推奨される。アメリカ合衆国の公衆衛生局は、1962年にこの濃度幅を飲料水中のフッ化物濃度の基準として採用し、それ以降現在でも広く使われている。

 しかしながら、1990年代までに、これらの基準が世界のすべての地域で適正だとは言えなくなってきたのである。アメリカ合衆国でさえ、エアー・コンディショニングの出現や加工された食品とソフトドリンクの消費の増加、さらにはほかの由来源からのフッ化物の増加がみられ、これまで基準としてきた前提を過去のものとしてしまった。
世界の他の地域でも、特にアフリカとアジアの熱帯と亜熱帯地域では、多くの異なる人種と文化によって食習慣が変化に富んでいるため、推奨されている濃度幅はおそらく適正とはいえないだろう。幾つかのアジア地区では、確かにガイドラインに準じた基準でも歯のフッ素症の発現と程度が過度に高いところがある。
たとえば香港は、1961年に水道水のフッ化物添加を始めて以来数回にわたって飲料水のフッ化物濃度を調整し、暑い季節と涼しい季節の濃度を変えたりして年間を通した適正な濃度を見出す努力をしてきた。アメリカ合衆国公衆衛生局のガイドラインによれば、香港の至適濃度は約0.8mg/l (ppm) となっている。しかしながら、子どもたちの歯のフッ素症は、いまだに無視できないほど高いレベルにある。このため、1988年には濃度をいくつかの段階を決めて0.5mg/l (ppm) まで落とした。

 1962年に定められたアメリカ合衆国公衆衛生局のガイドラインのリストに載っている年間気温に基づく飲料水中の推奨されるフッ化物濃度のレベルは、世界の熱帯および亜熱帯で使用するには好ましいものではない。なぜならば、それらの地域での応用は、期待された歯のフッ素症のレベルよりも高かったからであり、これらの地域にとっては推奨された濃度が高すぎたことを意味していると思われる。したがって、寒い気候の地域でも1.0mg/l (ppm)の濃度が上限であり、そして、いま香港で使用されたりメキシコ湾にのぞむアメリカの諸州で推奨されている0.5mg/l (ppm) が適正な下限濃度であると推測される。

(この章の終わりに「訳注」があります。その一部を抜粋します。)
訳注:(一部抜粋)
(香港に関しては)中国系住民の食習慣として、常用食に骨入りのスープを飲用しているので骨中フッ化物の摂取量が過剰なフッ化物摂取の一因になることも考えられるということである。あり得ることと考えられる一面もある。

以上引用しました。
飲料水中の適正なフッ化物濃度」を見出すため(まだ見出されていなかった?!)、実例と照らしながら数値を補正して努力している様子がうかがえました。
香港のことも参考になりました。

 ◆ 第13章 フッ化物の多重暴露

以下引用します。


飲料水にフッ化物が添加されている地域ではフッ化物配合歯磨剤で歯みがきをしているし、どんなところに住んでいる人でも、フッ化物配合歯磨剤の使用に加えて食品や飲料から著しい量のフッ化物を、ほとんど知らないうちに摂取している。
いくつものソース(源)からのフッ化物の暴露は、有益な場合もまた望ましくない場合もある。フッ化物がう蝕の予防に働く幾つかの手段としては十分有効であるが、歯のフッ素症の潜在的な増加もまた考慮されなければならない。
(中略)
公衆衛生の管理者は、う蝕予防のフッ化物プログラムを導入する前に住民のあらゆるフッ化物暴露の状況を知っておくべきである。

引用は以上です。

安全性のうえで大切なのは、一人一人のフッ化物の総摂取量であるとWHOはいっています。
日本人の食文化として、緑茶を日常的に飲むことや、魚を多く食べることがあります。これらは、フッ素を比較的多く含む食品です。個人についてみれば、水のかわりにもっぱらお茶を飲む人もいれば、まったく飲まない人もいるでしょう。千葉県の海沿いではイワシをたくさん食べることが知られています。「住民のフッ化物暴露(摂取)の状況」は一様でなく一人一人異なります。
健康増進課や推進派の学者はこの点をどう考えているのでしょう。

適正なフッ化物濃度」を見出すことができるのでしょうか。香港のように、やってみないとわからない、ということにならないでしょうか?


以上WHOテクニカルレポート846についてみてきました。

(*注)この翻訳には誤訳が多いという指摘があり、薬害オンブズパースンが原文とともに、誤訳の訂正を発表していますので紹介します。

WHO(世界保健機関)テクニカル・レポート・シリーズ 846
「フッ化物と口腔保健」の日本語翻訳版の誤訳問題    (インターネットで検索できます。)
 
今回こちらも参考のため読みました。
(私たちが引用に用いた部分は、大きな誤訳問題に抵れる個所ではなかったので、おおむね正しく翻訳されているようです。)
   


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